改革?改善?中堅・中小企業になにが必要か

 企業改革、経営改革、経営改善、業務改革、業務改善といろいろな言い方があります。わかりやすく言うと、改革は「抜本的」、改善は「部分的」な取り組み、となるでしょうか。今回の一連の連載記事では「経営レベルと業務レベルの改革を目指す」という意味合いで、経営改革・業務改革という括りでお伝えしています。もちろん、改革プロジェクトの中で短期・中期・長期目標を立てる中で、短期の改善は実施していくものだと考えており、広義には改革に改善は含まれると定義しておきます。

  • 企業改革:企業全体の構造や文化、事業ポートフォリオの抜本的な見直し。
  • 経営改革:企業全体の戦略や構造に対する大規模な変革。
  • 経営改善:具体的な経営課題に対する実践的・部分的な改善策を実施し、短期的な成果を目指す。
  • 業務改革:業務プロセスや運営方法の抜本的な再設計や変更による大規模な変革。
  • 業務改善:既存の業務を少しずつ改善し、効率化や最適化を図る部分的な改良。

 中堅・中小企業で、もう一段の成長に向けて取り組むべきは、短期的な小改善ではなく、中長期的な視点に立って強い会社・組織にしていくための改革プロジェクトを立案し、それを短期・中期・長期目線で改善アクションプランを立てて実行していくことだと思います。

 自分たちがどこを目指しているのか、そして今どこにいるのか、というバックキャスト経営(企業の将来のあるべき姿や長期的な目標・ビジョンを最初に設定し、その目標を実現するために現在から逆算して必要な行動や戦略を考えること)の考え方が、改革を実行するうえで重要な概念となります。フォアキャスト経営(現在の状況や過去のデータに基づいて将来を予測し、それに基づいて経営戦略を立てながら、市場や技術のトレンドを分析し、未来の状況を予測するアプローチ)と比べて、

  • 長期的な視点が持てる
  • イノベーションが促進できる
  • 組織全体の目標意識を統一できる

といったメリットが上げられます。バックキャスト経営は、特に環境の変化が激しい現代において、企業の競争力を保つために重要なアプローチとなっています。

 場当たり的ではなく、全社目標を作って、そこに向かって全員が同じ目線で改革に取り組むことでき、自律的な組織による改革が推進しやすくなると思います。海外企業ではその目標を「ノーススター(北極星)」などとよく言われています。道しるべがあると迷いませんよね。注意すべきことは、この目標が全員に腹落ちされているかです。経営者が勝手に決めて、十分な説明がない場合、社員は腹落ち感がないため北極星にはなりえません。大手企業の改革プロジェクトでも、腹落ちを得ないままプロジェクトを進めて、途中で「何のためにやっているんだっけ」といった声が出てくるケースをいくつか見てきました。長期目標やビジョンを、社員全員または次世代リーダー、幹部候補で決める「場」を持つことをお勧めします。当方では、コンサルティング支援のはじめに、課題ツリーワークショップを行い関係者の方向性が合うような工夫をしています。