中堅・中小企業で管理のしくみ化が必要な段階について、組織のライフサイクルモデルに沿ってみると、三段階目の公式化段階、会社がある程度成長してきて創業経営者が自分で見切れる範囲を超えてきた段階で、内部システムの追加が必要になってきます。ここが、私の言う「管理のしくみ化」を行うタイミングとなります。

出所:組織の経営学 リチャード L.ダフト 高木春夫訳 ダイヤモンド社
それでは、このタイミングで必要な管理として、主だったものをあげてみます。
業績管理(KPIや目標管理)
事業目標やKPI(重要業績評価指標)を設定し、それに基づいて従業員の業績やプロジェクトの進捗を管理するシステムを整備します。これにより組織全体が同じ目標に向かって進むことが可能になります。実際に、中堅・中小企業を見てみると、業績管理のルール化が不十分なケースが多いです。ルール化に向けて、目的・目標の整理から始めることが重要です。
人事管理(採用・育成・評価)
組織が成長する中で、適切な人材の採用、育成、評価を行うためのシステムを整備します。具体的には、従業員のキャリア開発や評価基準の明確化が必要です。中小企業研究の権威である坂本光司先生によると、「現場が自律的に進化していこうとする組織風土」が企業経営のポイントで、良い組織風土に加えて「採用力」「育成力」「定着力」の3つの力を高めることが生産性向上の鍵であると主張されています。
業務プロセス管理
業務の標準化を図り、効率的な運営をサポートするために、業務プロセスの定義やワークフローの整備を行います。これにより、業務が見える化され、属人化を防ぐことができ、効率的な業務運営が可能になります。野中郁次郎先生のSECIモデルでも言われている「暗黙知」を「形式知」にしていくプロセスになります。SECIモデルについては、次回解説します。
財務管理
資金の流れや利益を正確に把握し、適切な予算管理やコスト管理を行うための仕組みを構築します。特にキャッシュフロー管理が重要です。少なくとも三期分の財務諸表を分析して、現状の問題点と課題を抽出して、生産性改善の余地を定点観測していくことが必要です。中堅・中小企業では、経営分析を定期的に行っている企業は少なく、経営者の経験と勘に頼っているところが多いのが現状です。
リスク管理
組織が成長する中で生じるリスク(法的、財務的、運営的リスク)を識別し、それらに対処するための仕組みを構築します。リスク管理システムの導入により、問題が発生した際の迅速な対応が可能になります。組織運営にまつわる文書体系を整備するところから始めるとよいと考えています。
このようなヒト・モノ・カネ・情報の管理の仕組みを整えることで、組織の持続的な成長が支えられます。