中堅・中小企業も管理のしくみを必要としている

 前回、日本全体の生産性の低さ、特に中堅・中小企業で生産性改善に向けた取り組みが遅れていることを述べました。では、中堅・中小企業が生産性を上げるために、どういったステップで取り組むべきでしょうか。

 まず、営業力を上げる、間接部門の業務効率を図る、商品を差別化する、競争力をつける、会社全体の生産性を上げる、といった時に必要なことは、「取り組みを継続すること」が何よりも大切です。一過性の改善の取組みでは、現状を維持しようとして元に戻る力(組織の慣性)が働きます。よって、生産性向上の改革・改善の取組みを継続する「しくみ化」が必要となります。

 大手企業は、組織も大きくなり、部門が増えていくに従い、しくみ化に継続して取り組み、企業競争力を高めています。一方、中堅・中小企業は、ヒト・モノ・カネの経営資源が潤沢ではないため、目の前の業務に追われて、また、それを推進するノウハウもないため、しくみ化の取組みが後回しにされがちです。これでは、大手企業との差は開くばかりです。中堅・中小企業こそ、成長に向けて改革・改善の取組みをしくみ化する必要性があるのです。

 しくみ化の例をあげると、会社全体の組織運営、組織文書体系、業務プロセス(仕事の流れ)のフロー化、決裁や会議体などコミュニケーションの体系化、課題の体系化、データを駆使した営業戦略の立案や販路開拓、経営理念などをベースにした人材採用方法、など会社組織全体にかかわる多くの仕組みがあります。

 中堅・中小企業では、これらが暗黙知になっていたり、長年更新されていなかったりして、しくみ化されていないことが多いです。組織力を高める、新しい人がスムーズに仕事に入り効率的に習熟する、営業成績の良い人の取組みをまねてチームと会社の売上を伸ばしたりするには、それぞれの「管理のしくみ化と見える化」を図っていく必要があると考えています。中堅・中小企業こそ、成長に向けた管理のしくみが必要なのです。