改革プロジェクトについて述べる前に、社会的背景について、少し考察してみたいと思います。日本の生産性の低さが叫ばれて久しいですが、その原因はどこにあるのでしょうか。
- 労働慣行の非効率性:長時間労働や年功序列型の給与体系が、新しい技術やアイデアの導入を遅らせている(海外企業は我先にと帰り、自分と家族の時間を大切にしている)。
- デジタル化の遅れ:デジタルツールや自動化技術の導入が遅れ、労働集約的な業務が多い(海外企業はタスクを早くこなせれば手段を問わない柔軟さがある)。
- イノベーションの低迷:研究開発への投資が不十分で、特に中小企業での技術革新が進んでいない(海外企業は投資対効果の試算やポートフォリオ管理が得意)。
- 規制の硬直性:過度な規制や官僚主義が、企業の柔軟な対応や新規ビジネスの立ち上げを阻害している(海外企業は形ではなく、スピードと結果重視)。
- 労働力人口の減少:高齢化による労働力不足が、生産性向上の妨げになっている(海外企業の多様性ははるかに進んでおり、新陳代謝が激しい)。
といったことが言われてきました(ちなみに、カッコ内は、私の外資系ベンダ経験において実際、比較してみて体感してきたことです)。他国はどのような状況でしょうか。
- 米国:デジタル化の進展やイノベーション文化が浸透しており、ITや自動化を活用した業務効率化が進んでいる。
- ドイツ:製造業の自動化が進み、労働力の質の向上や生産プロセスの効率化により高い生産性を実現。
- 韓国:積極的なデジタル化や教育への投資が、生産性向上に寄与している。
- スウェーデン:フレキシブルな労働市場政策と高度なデジタル技術の導入により、労働生産性が高い。
- シンガポール:政府主導のデジタル経済政策が、特に金融やサービス業での生産性向上に貢献している。
総じて、政府主導で、官民一体の生産性向上に向けた取組みを推進しているようです。たしかに、私が勤めていたドイツ企業は、国策としてのIndustry4.0の推進に全面的に協力していました。一方、日本でも、経産省、総務省、厚労省、内閣府のデジタル庁などの省庁や、日本生産性本部などの団体が、国全体の生産性向上に向けた施策や教育を推進してきていますが、日本の労働生産性はOECD加盟38か国中30位と大幅に後れを取っています。最近では、日本の屋台骨の一つである自動車産業でさえ、中国などに押されて国際競争力を失いつつあります。
生産性改善に向けた取組みとしては、
- デジタル化の促進:企業や公共機関におけるデジタルツールや自動化技術の導入を加速させる。
- 労働環境の改革:柔軟な働き方を奨励し、テレワークの推進や短時間労働による効率向上を目指す。
- 教育と研修の強化:特にITやデジタルスキルに関する労働者の再教育を行い、技術革新に対応できる労働力を育成する。
- 規制緩和とビジネス支援:新規ビジネスの立ち上げや中小企業のイノベーションを促進するために、規制を緩和し、資金面や技術面でのサポートを強化する。
- 労働力の多様化:女性や高齢者、外国人労働者の労働参加を促進し、多様な人材を活用することで、生産性を向上させる。
などが上げられます。政府もさまざまな施策で、日本の生産性向上に向けた努力をしていますが、こうした状況を打開するためには、民間企業の1社1社が、生き残りをかけて「自助努力として」経営・業務改革を推進して抜本的に企業体質を変え、生産性向上を図る工夫を継続する必要があります。大手企業は豊富な経営資源で改革を推進していますが、中堅・中小企業では、業務改善レベルとなっており、単純なIT化をDXなどと言われているところが多く、「改革」レベルのプロジェクトを推進しているところは少ないように思われます。これでは、勝てません。