ITコーディネータプロセスガイドライン4.0(第3部)

ITコーディネータプロセスガイドライン4.0(第3部)

価値実現サイクルの目的は、デジタル経営成長サイクル(C1)に基づき、顧客価値の実現と経営目標の達成を目指す一連の取り組みになります。計画、実行、評価プロセスを繰り返し実施します。

構成する4つのプロセス

  • デジタル経営実行計画プロセス(P3) デジタル経営戦略をもとに具体的な活動計画を作成
  • IT開発・導入プロセス(P4) IT開発と業務改革を同時に実行
  • 価値提供・運用プロセス(P5) 新しい業務・システムを運用し、価値を創出
  • 提供価値検証プロセス(P6) 運用結果を検証

価値実現サイクルの特徴

  • 顧客価値の最大化を目的として、戦略・開発・運用を連携
  • スピーディーな実行と評価を目指す

価値実現サイクル(C2) の実務への適用には「仮説・検証型」と「計画・実行型」の2つの方法があります。

『デジタル経営戦略プロセス(P2)』へのフィードバックが大切になります。

  • 実行結果のフィードバック

『価値実現サイクル(C2)』の実行結果を定量的データとして取得し、デジタル経営戦略を客観的に評価し、顧客獲得や維持、収益性、生産性・効率性の変化などの成果を可視化します

  • フィードバックの重要性

デジタル経営戦略の実行結果を評価することは、『価値実現サイクル(C2)』の重要な役割の一つです。実行現場での競合動向や新技術の情報を基に、戦略見直しの必要性を判断します

  • 戦略見直しの必要性

顧客ニーズの変化や競合、新技術の登場による事業前提の変化に対応し、実行計画の修正だけでなく、戦略自体の見直しを求められる場合があります

  • 情報共有と連携の重要性

各プロセス(P3~P6)と『デジタル経営戦略プロセス(P2)』では実行主体が異なることが多いため、情報共有と認識の一致が重要です。戦略の更新が遅れると、効果的な打ち手を実行できず、逆に戦略見直しが現場に伝わらないと、無駄な活動や機会損失が発生します

  • 効率的かつ効果的なサイクルの実行

相互連携により、適切なタイミングで次の打ち手を実行可能にし、組織全体の力を高めるため、迅速なサイクル運用と戦略の適応が必須です

『価値実現サイクル(C2)』での役割分担は下記になります。実行主体は、デジタル経営推進者になります。

『価値実現サイクル(C2)』のプロセスとアクティビティは下記のとおりです。プロセスごとの詳細を見ていきたいと思います。

① 『デジタル経営実行計画プロセス(P3)』

デジタル経営戦略で定義された顧客価値やビジネスモデルを実現するためのサービス・製品を定義し、業務プロセスやシステムの目指す姿を設計します。具体的なタスクは下記のとおりです。

② 『IT開発・導入プロセス(P4)』

IT システムの開発及び導入を実施することにより、ビジネスプロセスの効率化や自動化、データの収集や分析、顧客体験の向上や新たなビジネスモデルの創出、チームコラボレーションの強化、イノベーションと競争力の向上等を実現することができます。

『IT 開発・導入プロセス(P4)』 は、『IT 開発(P4-1)』と『IT 導入(P4-2)』の2つのアクティビティで構成され、IT によって実現される価値を最終成果として強く意識し、価値を最大化するための仕組みづくりを行います。ここで、IT選定~導入~利活用開始まで、一気に進めます。

③ 『価値提供・運用プロセス(P5)』

IT サービスの価値は、IT サービスが利用されることやシステムが安定稼働していることだけではなく、IT サービスが顧客や利用者にどのような価値を提供できるかが重要です。『価値提供・運用プロセス(P5)』は、『IT 利活用による価値の提供(P5-1)』と『IT サービス運用(P5-2)』の2つのアクティビティで構成され、提供価値を意識して、導入されたIT サービスを利活用・運用して価値の提供を行います。

④ 『提供価値検証プロセス(P6)』

継続的に価値を提供し、価値の品質を高めるため、IT サービスや提供価値の状況を検証し改善します。『デジタル経営実行計画プロセス(P3)』で定義された顧客価値や、ビジネスモデルを実現するための実行計画を、より高品質に実施するために、『IT 開発・導入プロセス(P4)』、『価値提供・運用プロセス(P5)』における効率化や自動化、品質向上、教育等の改善点を洗い出し、フィードバックを行います。各プロセスでは、フィードバック内容に基づき、必要に応じてデジタル経営共通基盤(CB) から適切なアクティビティを当該プロセスに組み込んで改善策を実施することになります。

最後に、業務改革の必要性・新たなニーズ・価値への気付き等の情報を、『デジタル経営実行計画プロセス(P3)』にフィードバックします。これにより、次の『価値実現サイクル(C2)』が回るときに、フィードバックの内容を元に、『デジタル経営実行計画プロセス(P3)』で計画の見直しが行われ、より高付加価値なバリューチェーンの実現へとつなげることができます。これで、『価値実現サイクル(C2)』が完了しました。

第4部の『デジタル経営共通基盤(CB)』は、サイクル横断のアクティビティになります。こちらは次回、説明したいと思います。