(5)WBSをつくる

 プロジェクト成功のポイント3つ目は、プロジェクト管理についてです。せっかく、目的を合意し、コミュニケーションに留意しながらプロジェクトを進めても、プロジェクト管理がおろそかだと、迷走します。よって、WBS (Work Breakdown Structure)を作り、きめ細かく運用していくことが重要です。

 WBS (Work Breakdown Structure)とは、「作業分解構造図」とも呼ばれ、プロジェクトにおける各タスクを分解し、階層的に表現した管理手法です。プロジェクト全体の作業内容を可視化し、チームメンバーが次に何をすべきか、ゴールまでにあと何が必要かを把握しやすくします。意外にこれを軽視するプロジェクトが多く、空中戦の議論を何度も交わしながら前に進まない、というプロジェクトが少なからず見受けられました。この特集記事の最初のころにお伝えした北極星ではないですが、道しるべがないと前に進めません。暗中模索にならぬよう、しっかり、きめ細かく、プロジェクト管理することが大切です。WBSを書くためには、プロジェクト全体を俯瞰できている必要があります。外部支援者でWBSを書けないようだと、信頼して任せられるか慎重に見定める必要があります。

WBSの特徴

1. 作業の構造化

WBSはプロジェクト全体の作業を階層構造でまとめたもので、以下の利点があります:

  • 全体像の把握が容易になる
  • 次に実行すべきタスクが明確になる
  • タスク同士の関係性が理解しやすくなる

2. タスクの可視化

WBSを使用することで、以下の点が明確になります:

  • やるべきタスクの全容
  • タスクの前後関係と期限
  • 各タスクがプロジェクトに与える影響

3. 役割の明確化

プロジェクト内のタスクが明確になることで、チームメンバーの役割分担がスムーズに決定できます。これにより、チーム内のコミュニケーションも円滑になります。

4. スケジュール管理の効率化

WBSを使用することで、以下のような効果が得られます:

  • 現実的なスケジュールの作成が可能
  • クリティカルパス(プロジェクト全体の遅延につながる重要なタスクの連なり)の把握
  • タスクの遅れや前倒しがプロジェクト全体に与える影響の理解

WBSとガントチャートの関係

 WBSとよく対比されるのがガントチャートです。WBSはプロジェクト全体の作業項目を可視化するのに対し、ガントチャートはプロジェクト全体の進行度を可視化します。多くの場合、WBSとガントチャートを組み合わせて使用することで、より効果的なプロジェクト管理が可能になります。

WBSは、プロジェクトの目的達成に必要なタスクの相関関係を一目で把握できるようにし、関連するタスクを意識しながらスケジュール管理を行うことを可能にします。これにより、プロジェクトの精度を高め、チームの力を最大限に引き出すことができます。