プロジェクトの人事評価制度について

 改革プロジェクトにおける人事評価制度について、これも改革の成果を最大化するには大事なので、少し触れておきます。

 改革プロジェクトにおける人事評価制度の設計は、メンバーのモチベーションを高め、成果を最大化するために非常に重要です。逆にきちんと設計しておかないと、各部門の代表・次世代エースとして参画したであろうメンバーがモチベーションダウンして、退職リスクも生じます。以下のような評価方法と配置転換のポイントが考えられます。

① プロジェクト期間中の評価

貢献度と成果に基づく評価:プロジェクトの目標達成度に対して、個々のメンバーの貢献度を明確に評価します。具体的な達成項目を事前に設定し、それに基づくフィードバックを定期的に行うことで、メンバーが自身の評価を理解しやすくなります。プロジェクトリーダー自ら、1on1フィードバック面談を最低四半期に一度は行うようにして、疎外感を感じさせないよう丁寧にコミュニケーションを図ることが大切です。

プロジェクトの成果に連動した昇給・ボーナス:一定の成果を上げた場合には、成果に応じた昇給やボーナスを与えることで、達成感とモチベーションを高められます。過去のお客様では、プロジェクトにアサインされた時に臨時の賞与を付与してモチベーションを高める工夫をされる企業もありました。外発的動機付けも大事ですね。

スキル習得と自己成長に対する評価:変革プロジェクトでは、特定のスキルや知識が必要となるため、プロジェクト参加によって得られたスキルの評価を行い、今後のキャリアパスに役立てることができます。1on1フィードバックで、キャリアパスを示していくことも大切です。

② プロジェクト終了後の評価と配置転換

プロジェクトリーダーシップや戦略的視点の評価:改革プロジェクトの経験を経て、経営視点での判断力や戦略的思考が育っているかを評価します。優れたリーダーシップを発揮したメンバーは、他の変革プロジェクトの指導者としての配置も検討できます。過去の事例では、本社の業務改革プロジェクトで営業部門から参画したプロジェクト事務局(PMO: Project Management Office)の方が、事務局でありながらプロジェクトリーダーのようなリーダーシップを発揮して、スピード感あるタスクの差配や進捗管理をこなし、遅延なくプロジェクトを完遂させられました。その直後、欧州子会社の営業組織の立て直しを命じられ、最終的にはその子会社の社長になられました。聖徳太子のように皆さんの議論をメモ取りながら、打合せ完了時に議事録を関係者に送付して、スピード感のある取りまとめをされていたのが、大変印象に残っています。

経営企画部門や中枢役割への登用:成果をあげたメンバーを経営企画や新規事業企画部門に配置することで、会社全体の経営変革を推進するリーダーとしての役割を担わせることができます。プロジェクトに参画することは、出世につながるというキャリアパスの提示は、次世代エースクラスの方のモチベーションを大いに高めます。

ローテーション制度の導入:元の部署に戻すだけでなく、得た経験を活かせる他の関連部門へ異動させることで、組織全体での知見の共有と横展開を図れます。逆に、元の部署に戻すのはもったいないと思います。改革プロジェクトで広く経営視点を習得し、様々な部署で経験を積ませて、将来の幹部候補に育成することが本人にとっても、会社にとっても、大切ではと思います。必要とされている、という実感が会社への帰属意識も高めますね。よって、プロジェクト完了後のキャリアについても、1on1フィードバックの面談で示していくことも、経営層の重要な役割になります。