暗黙知を形式知に

 SECIモデルという有名な理論があります。「知識創造の理論」として一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏、竹内弘高氏らによって1990年以降に提唱、発展されたモデルです。SECIモデルは、組織が新しい知識を創造し、それを組織全体に広め、活用する過程を説明しています。日本企業の競争力の源泉を探る中で、欧米の企業と比較して日本企業が持つ独特の知識創造プロセスに着目し、知識が「暗黙知(tacit knowledge)」と「形式知(explicit knowledge)」に分けられ、これらが互いに変換され、相互作用することで知識が創造されるという考え方に基づいています。

 「暗黙知」は、わかりやすく言うと「まだ言語化されていない知識や経験」、「形式知」は「すでに言語化されている知識や経験」のことです。個々の暗黙知を見える化して組織の形式知にし、組織の形式知を個人が取り込んでさらなる暗黙知を形成し、さらにはそれを組織の形式知にし、らせん状に絶えず進化していく過程を描いたもので、暗黙知を基盤とする日本企業の強みを理論化した「強い組織づくり」を実現する重要な概念です。

SECIモデル

 中堅・中小企業では、少数精鋭で事業運営されており、個々人の暗黙知が形式知化されていないケースが多いです。企業が成長していく過程、特に組織のライフサイクルモデルでいう公式化段階に進んでいく中で、個々人のノウハウを見える化し、共有して、組織力を高めていく必要があります。マニュアルがない、業務が属人化されていて標準化されていない、教育体系が確立していない、システムが統一されておらず二重入力がいたるところにある、などの原因で組織全体が非効率な状態になっています。 

 業務や仕事の仕方を見える化する際は、ひと苦労ですが、二度手間や残業などを削減していくことができます。この知識創造モデルを自然に、実直に、行っている企業は、ムダ・ムラ・ムリのない効率的な仕事の仕方を実現しており、強い組織文化を形成しています。