第2部は『デジタル経営成長サイクル(C1)』についてです。
『デジタル経営成長サイクル(C1)』 は「経営環境の変化を的確に捉え、変革のための戦略を策定するサイクル」と定義しています。ここで策定した戦略は『価値実現サイクル(C2)』 で実行し、成果がフィードバックされ、フィードバックされた情報を評価し、次なる変革につなげるという環状(ループ)になっています。

企業が持続的成長をするために、この反復的な活動が極めて重要です。改革プロジェクトをやって終わり、終わったらプロジェクトメンバーは解散、ノウハウは分散されて消えていく、というプロジェクトをよく見てきましたが、本当に「もったいない」と思います。改革プロジェクトにかかわったメンバーは、将来の幹部候補生として、経営企画や業務改革を担う部署に暫く在籍し、その効果をきっちり検証して、当初の目論見を定着させるべきだと思います。
下記は、この『価値実現サイクル(C1)』におけるキーパーソンと役割分担表になります。改革を強力にリードするのは経営者であるべきで、その思いを実務面で支える右腕の存在となるデジタル経営推進者も欠かせません。

改革プロジェクトの成功は初期フェーズで決まります。『変革・成長プロセス(P1)』がスタート地点ですが、実はそのプロセスの中に実行レベルでアクティビティが定義されています(憶えきれないと思うので、サイクル>プロセスくらいまで把握しておけばまずはOKです)。
『変革・成長プロセス(P1)』の一つ目である『変革認識アクティビティ(P1-1)』にて、経営者が新たな変革の必要性や気づきをふまえて、変革の方向性をまとめた変革構想を打ち出します。この戦略を、『価値実現サイクル(C2)』で実行に移します。戦略の実行状況は『価値実現サイクル(C2)』の中でモニタリングされ、『デジタル経営実行計画プロセス(P3) 』からフィードバックされます。

『デジタル経営成熟度レベルの向上アクティビティ(P1-2) 』では、現在の成熟度評価を行い、戦略策定のインプットとし、成熟度の向上目標を設定します。
『デジタル経営戦略プロセス(P2)』 では、『変革・成長プロセス(P1)』 からのインプットをもとに、さらに経営環境情報の収集と分析を進め、デジタル経営戦略を策定します。ここで、経営ビジョン、顧客価値の定義・確認、事業価値を実現するためのビジネスモデル、全社的なデータ・IT 利活用方針等を検討する、重要なプロセスになります。
それでは、デジタル経営成長サイクル(C1)>変革・成長プロセス(P1)>変革認識アクティビティ(P1-1)から、見ていきたいと思います。
① 『変革認識アクティビティ(P1-1)』
経営者が、変革の思いを語り、構想を描きつつ、失敗を恐れずチャレンジする組織風土の醸成と支援を行うことが肝要です。

② 『デジタル経営成熟度レベルの向上アクティビティ(P1-2)』

デジタル経営成熟度には、4つの評価視点があります。
「デジタル経営マインド」と「デジタル経営ガバナンス」デジタル経営全体に関わる視点
「デジタル環境」と「デジタル利活用」価値実現サイクル(C2) の活動に関係する視点
各評価視点における評価項目の成熟度レベルを判断する情報は、デジタル経営共通基盤(CB)の各アクティビティから取得します。定性的・定量的な目標を立て、バランスよく組織能力を高め成熟度を上げることが必要です。
③ デジタル経営戦略プロセス(P2)
『変革・成長プロセス(P1)』で作成された変革構想とデジタル経営成熟度の評価及び成長計画を受けて、『デジタル経営戦略プロセス(P2)』デジタル経営戦略の策定と展開、実行後の評価を行います。デジタル経営戦略は、中長期的に目指す方向性を示し、必要な経営資源の配分やデータとIT を徹底的に利活用する行動計画を示して、持続的な競争優位を確立するための重要な戦略となります。デジタル経営戦略といっても、要はデータやITを利活用した経営戦略そのものです。

タスク8の『デジタル経営戦略達成度評価』では、後述する『価値提供・運用プロセス(P5)』で測定された事業の評価指標(KGI/KPI)と、それを『提供価値検証プロセス(P6)』での検証を経てデジタル経営実行戦略プロセス(P3) で評価した結果の情報をインプットとして、デジタル経営戦略策定時に設定した目標値と実測値を対比し、達成度を評価します。財務指標で測定可能にすることが必要です。バランススコアカードの戦略マップを作り、KGI>CSF>KPIと落とし込んでいくと良いでしょう。
ここまでが、第2部の『デジタル経営成長サイクル(C1)』となります。ここから、第3部『価値実現サイクル(C2)』につながります。