DXを推進するための第一歩~ITツールを活用していこう~

 DXの定義、中小企業のDX取組動向、推進ステップ案について、お伝えしてまいりました。少し難しい部分もあったかと思いますが「DX戦略は経営戦略そのもの」なので、まずは目的の設定から取り組みましょう。そうしないと、せっかくITツールの活用を試みても小手先の策となって上手くいかない結果になりかねません。粗くてもよいので「将来ビジョン」(将来像・青写真など)を描いてみるところからスタートするのがDX成功の秘訣です。

 それが設定出来たら、ITツールの検討です。ここではITツールを活用していく道筋についてお伝えしたいと思います。ITツールは非常に多岐にわたります。この記事を書く時に、ITツールのカオスマップ(全体像)を作ろうと思ったのですが、数万ツールに及ぶので諦めました。一つ参考になるのが、船井総研が提案しているテクノロジートレンドマップです。大手企業が利用はじめて2~3年後に中堅・中小企業でも実用段階になる、と言われているのは確かに、と思います。中小企業だとRPA(定型業務の自動化)がここ数年盛んに導入が進んだ感があります。

出所:「中堅・中小企業のためのDX実践講座」
船井総合研究所デジタルイノベーションラボ/日本実業出版社

右ページを見ると、AI, AI, AIと並んでいますね。生産性を劇的に高める要素技術だと思います。私も、どの業種、仕事で、どこまで何ができるか、日々研究しています。自身の生産性も3倍にすべく、少しずつ活用を進めています。

 より身近に、という点では、IT製品ランキングなどを見てみるのはどうでしょうか。

出所:「最強ITツール2023」ランキング50!4位に急成長のNotion、1位は?【独占先行公開】 | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン

 RPAやチャットボット(会話するロボット)、グループウェア・コミュニケーションツール、セキュリティ製品、デザイン、翻訳、Web会議、文書管理、名刺管理などがひしめいています。聞いたことがあるツールもあると思いますが「こういうものがあるんだな」と興味を持つところから徐々にITにも馴染んでいくとよいのでは思います。

 IT導入補助金の活用という視点で、ITツール・IT導入支援事業者検索(コンソーシアム含む) | IT導入補助金2024のサイトをご覧になるのもよいと思います。2024年度の公募は終わりましたが、事業を推進している中小機構が、運営を委託する業者選定を進めていますので、来年も当補助金は何らかの形で出てくるものと思われますので、活用しない手はないですね。2024年度は、通常枠/インボイス枠/セキュリティ枠がありましたが、通常枠では下図のようなカテゴリーでそれぞれ数十・数百レベルでツールが出てきました。自社で使えるものがないか、検索してみるといかがでしょうか。目的が設定されていれば絞りやすいと思います。

通常枠の場合
①顧客対応・販売支援のツール
②決済・債権債務・資金回収管理のツール
③供給・在庫・物流のツール
④会計・財務・経営のツール
⑤総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シスのツール
⑥業種固有の専門的なツール
⑦汎用・自動化・分析ツール

 ちなみに、「販路開拓」というテーマでおススメITツールをあげてみました。やることがたくさんあるので、優先順位づけが大切です。戦略策定で実現ロードマップを作っていたら、取組順は整理できると思います。

IT施策概要メリットポイント
1ホームページ
開設・充実
企業情報、商品・サービスの情報提供信頼性の向上、リーチの拡大、商品・サービスの訴求(写真や動画)、アクセス解析モバイルフレンドリー、SEO対策(検索エンジンで上位表示)、定期更新(ブログやお知らせ)
2SNS活用(運用)FacebookやInstagramでPR広範囲への情報発信、顧客との直接的なコミュニケーション、ターゲット絞込み広告定期投稿と一貫したブランドイメージの維持が重要
3ECサイト構築自社オンラインショップを構築して直接販売24時間営業、中間業者を排除して利益率向上、特定商品の特化販売が可能ShopifyやBASEを活用して簡単にスタート。越境ECも最近は容易
4オンラインマーケット
プレイスへの出店
Amazonや楽天市場プラットフォーム活用集客力が大きい、新規顧客の獲得に効果的手数料や規約を確認して採算性を検討
5メールマーケティングキャンペーン情報や商品情報をメール提供コストが低い、リピート購入を促進可能メルマガ配信ツールを活用し、顧客セグメントごとに最適化
6デジタル広告Google広告やSNS広告でリーチ少額から始められる、ターゲットを絞った広告が可能キーワード選定と広告文の最適化が重要
7ローカルSEO
(MEO対策)
Googleビジネスプロフィールで近隣狙い地域顧客への認知度向上、地図検索での視認性アップ営業時間や写真、口コミ管理を徹底
8サブスクリプションモデル導入定期購入や会員制サービスを提供安定収益基盤を構築、顧客ロイヤルティ向上継続利用の価値を提供する仕組み作りが鍵
9生成AIなどで業務効率化生成AIやCanvaなど無料ツールの活用初期投資を抑え、小規模でも簡単に導入可能目的に合ったツール選定と運用方法の習熟が必要
10チャットボット導入顧客対応を自動化する顧客対応の負担軽減、24時間対応可能よくある質問を中心に回答を設定

投資対効果の試算も必要なので、やりたいことを大まかに絞れたら、いよいよそれがどのくらいの費用で実現でき、効果はどれくらいなのかを検討していきましょう。なかなかこうした投資の流れを作っていくのは時間がかかるので、推進体制を整える必要が出てきます。体制やDX人材については、また別途お伝えしたいと思います。