経営は「実行」
組織改革のご支援にあたり「実行力」の大切さを痛感しています。いくら壮大な何百ページにもおよぶ戦略を立案しても実行されなければ、何の意味もありません。お蔵入りする企画書・計画書はたくさん見てきました。なぜ、実行されないのか。実行力のある組織は強く、事業も軌道にのっていますが、そうした組織をつくるには戦略ビジョン・実行プロセス・実行する人材を有機的に結びつけることが大切です。人の意識と行動を変えるには時間がかかる地道なプロセスですが、リーダー(経営者)が最後まできっちりフォローしていくことが必要だと思います。
経営は「実行」という有名な著書があります。結びにこう書いてあります。
- ビジネスの仕組みの本質は、人材、戦略、業務という三つのプロセスがいかに結びついているかにある
- リーダーは、個々のプロセスとそれが全体としてどう関連し合っているかを学ばなければいけない
- それが実行という体系の基礎であり、戦略を策定、実行する上での柱になる
以前、この著書の要約をまとめたものがあるので、参考に掲載します。興味があれば、著書を読んでみてください。自分も改めて論点を眺めてみて、過去の場面場面を振り返り、その通りだなと思い起こすことが多々あります。実務経験がないと、実感が湧かないかもしれませんが、リーダーが心に留めて、行動する原理が書かれているので、おススメです。
第Ⅰ部 なぜ実行が求められているのか
第1章 誰も気づかないギャップ
実行とは何か
・実行とは体系的なプロセスであり、戦略に不可欠である。 ←戦術ではなく、戦略レベル
・実行とはリーダーの最大の仕事である。 ←リーダーが組織にどっぷり浸かってこそ、その組織は実行力を発揮できる
・実行は、企業文化の中核にすべきである。 ←実行は持続的に改良を進めるプロセスであり、行動に大きな変化を起こし、文化を変える
第Ⅱ部 実行の構成要素
第3章 構成要素その一 リーダーがとるべき七つの行動
1. 自社の人材や事業を知る ←事業に深く関与する、個人的な繋がりを持つ、現場に行く
2. つねに現実を直視するよう求める ←自社を現実的に見る、そして、他社と比べる
3. 明確な目標を設定し、優先順位をはっきりさせる
←優先課題を少数に絞る、優先順位が明確でないと従業員はうまく実行できない
4. 最後までフォローする ←最後までフォローしないのは、実行力欠如の最大の要因
5. 成果を上げた者に報いる ←業績と報酬を連動させる
6. 社員の能力を伸ばす ←コーチングをする。行動を観察し、役立つフィードバックを行う
7. 己を知る ←精神的強さが必要。自己の探求や克己心から生まれ人材スキルの基礎となる
精神的な強さを支える4つの資質
①本物、②自覚、③克己心、④謙虚さ
リーダーの行動は、組織の行動、文化の基礎である
第4章 構成要素その二 文化の変革に必要な枠組みをつくる
企業の文化を変えるには、社員の考え方や行動を、業績と直結するものに変える一連のプロセスー、社会的仕組みが必要。
1. どのような結果を出してほしいのかを社員に明確に伝える
2. どのような方法でその目標を達成するかを話し合う
3. 結果を出した社員に報いる。結果を出せなかった社員には、さらなるコーチングを行う
これらにより、実行の文化が生まれる
実行の社会的ソフトウェア
=企業のソフトウェアのこと。価値観、考え方、行動規範など(⇔ハード。組織構造、報酬体系、賞罰、業績報告など)
第5章 構成要素その三 他人に任せてはならないリーダーの仕事 適材を適所にあてる
なぜ適材が適所に配置されないのか
• 知識の欠如 リーダーの具体的な資質を把握していない
• 心理的な安心感 贔屓、派閥の部下を配置してしまう
• 要するに、個人としての関与の欠如が原因
どんな人材を求めるのか
• 社員を元気づける やる気を引き出すリーダー
• 難しい問題で迷わない 決断力
• 人を動かしてやり遂げる
• 最後までフォローする
適切な行動をとるリーダーを擁し、成果に報いる文化があり、適材を適所に配置する一貫したシステムがあれば、
それぞれのプロセス(人材・戦略・業務)を効果的に運営かつ管理する基礎は出来ている
第Ⅲ部 実行の三つのコア・プロセス
第6章 人材プロセス 戦略・業務プロセスと連動させる
しっかりした人材プロセスの会社が実践していること
1. 各人を正確に深く評価する
2. 幹部となる人材を見極め、育成する
3. 強力な後継計画の基礎となるリーダーシップ・パイプラインを確保する
前提となる構成要素
1. 人材を戦略や業務と結びつける
2. 継続的改善、後継者層の充実、離職リスクの軽減を通して、リーダーシップ候補を作る
3. 業績不振者に対処する
第7章 戦略プロセス 人材・業務プロセスと連動させる
優れた戦略を立案するには「いかに」実行するか、その方法に最大限の注意を払わなければいけないことが、ほとんど理解されていない(だから、多くの戦略が失敗する)
戦略の柱
どんな戦略も、5つ前後の主要コンセプトと、それを規定する行動に要約できる
どんな高度な戦略も、柱さえ明確にできれば、その核心は一ページで説明できる
具体的で明確なものが必要
第8章 戦略レビューをどう進めるか
数字だけを問題にする無味乾燥な議論はNG
戦略レビューは包括的で、双方向でなければならない
創造性を発揮する場でなければならない
リーダーはレビュー結果を絶えずフォローしなければならない(最後までフォローする)
戦略レビューで取り上げるべき質問(具体化が必要)
1. 競争相手についてどの程度詳しく知っているか
2. 組織の戦略実行力はどの程度強いか
3. 戦略計画の焦点はぼやけていないか、絞られているか
4. 適切な戦略計画を選んでいるか
5. 人材と業務の関係は明確になっているか
第9章 業務プロセス 戦略・人材プロセスと連動させる
戦略プロセスにより事業が目標とする行き先を決める
業務計画により、長期的な目標を短期的な目標に落とし込む
人材プロセスは、事業を目標に持っていく人間を決めるもの
業務計画は将来の目標を見て「いかに」達成するかを検討するもの
優れた実行力を発揮し、企業を活気づけるには、足並みを揃えることが重要
➡組織の各部門が、営業年度の外部環境について共通の想定をし、共通の理解をすること
相互関係にある各部の目標をすり合わせ、優先順位を合わせる
条件が変化した時は、一斉に優先順位を入れ替え、資源配分を見直す
