― 仕組みはあるのに人が動かなくて、困っているんです─
中小企業経営者の多くが人材育成の悩みに直面しています。
どんなに優れた仕組みやITツールを導入しても、結局「人が動かない!!」
私が数々の現場をご支援して見てきた現状です。
まず最初の相談でも経営者の90パーセントが
「人にまつわる問題」
を相談してこられます。
結局、労働生産性を高めるための改善活動もDX推進も、最後は“人づくり”に行き着くというのが現場の実態です。
中小企業が労働生産性を本当に高めるためには、仕組みの整備が大事だとさまざまな本に、そしていろんな企業改善コンサルがいいますが、そしてわたしもそう言ったりしておりますが、、、果たして仕組みを変えたところで本当の意味で、強くなれた会社はありません。
大切なのは仕組みもですが、現場力をつなぐ人材育成が一番大切なのです。
本記事では、
中小企業経営者が一番悩んで頭を抱える現場力を高める人材育成戦略について解説し、経営者のお悩みを解決いたします。
今回は
①現場を動かす人材タイプの分類、
②OJT/OFF-JTによる学びの仕組み、
③知識を形式知化する教育の仕組み化、
という3つの観点から整理します。
この3つを学び理解することで人材育成に関する悩みが解決できます。
解決不十分な場合は、私(善コンサルの善さん)が丁寧に一からお悩みを解決する30分間の無料相談もしていますので、お気軽にお問い合わせください。
まずは、とにかく今抱えている人材に関する悩みを解決すべくこの記事を読んでみてくださいね!
1. 労働生産性を持続的に高める鍵は「人」にあり
労働生産性は「付加価値 ÷ 労働時間」で表されますが、この数式の裏側には「人の能力 × 意欲 × 仕組み(環境・制度)」という要素が潜んでいると考えます。
これまでの本ブログシリーズで仕組みづくりを強調してきました。しかしながら、仕組みがどれほど整っていても、使う人の理解度や意欲が低ければ成果は出ない、というのが各社の支援を行っていて感じるところです。
逆に、能力と意欲を持つ人材がいれば、多少制度が未整備でも改善は動き出します。
つまり、人を育てることが、生産性を持続的に高める最重要要素なのです。
この視点に立てば、「教育」「成長」「改善」はすべて同じ文脈上にあり、経営課題そのものといえます。
【支援現場の声】理論を現場で体感した場面を紹介します。

1年以上ご支援している福祉関連企業の業務部長が、最近自ら動くようになってきました。「10年先を見据えた社員の自律化」がご支援のテーマですが、それを実感してうれしく思っています。業務フローやマニュアルの整備、不備事例集、依頼受付テンプレートなど、いろいろと作っているのですが、一つ一つの仕組みの有効性をご理解されてきて、これは使える!自分でもやってみようと、やれる!と自信をつけてこられたように感じています。仕組みと人の力が歯車のように噛み合ってまいりました♪
2. 人材育成により現場力が強くなる3つの人材タイプ
現場の生産性向上を支える人材は、大きく次の3タイプに整理できます。
この3層を意識して育成することで、現場が自律的に動く基盤が整います。※本分類は、現場改善・人材育成の観点から整理した、当方の支援経験に基づくものになります
| タイプ | 主な役割 | 必要なスキル | 育成の方向 |
|---|---|---|---|
| 実行型人材 | 標準作業を安定的に実行 | 手順理解・品質管理 | OJT、手順書・動画マニュアル |
| 改善型人材 | 現場のムダを発見・提案・実行 | 観察力・分析力・提案力 | 改善提案制度、QC活動、共有会 |
| 牽引型人材 | チームを導き教育する | 指導力・対話力・巻き込み力 | リーダー研修、メンター制度、1on1 |
多くの企業では「実行型」に偏りがちで、改善・牽引型に育つ機会が不足しています。「実行型」は、ひたすら頑張るハードワーカータイプが多いのですが、それが必ずしも成果に結びつくとは限りません。
まずは「誰をどの層に育てるのか」を明確にし、キャリアの見通しを示すことが重要です。実行型・改善型・牽引型を意識的に育成し、現場を自律的に動かす基盤を整えることが大切です。
あなたの会社、職場では“改善型人材”“牽引型人材”を意識的に育成していますか?
3. 現場力を高めるOJTとOFF-JTの組み合わせによる人材育成
人材育成の基本は、OJT(On the Job Training)とOFF-JT(Off the Job Training)の両輪です。
OJTは実践的で即効性がありますが、属人的になりやすい。
一方で、OFF-JTは理論を体系的に学べますが、現場への定着が課題です。
この2つをつなぐ「ラーニングループ」を設計することで、学びと実践のサイクルが回り始めます。
3-1. ラーニングループの流れ
- 現場課題に挑戦(OJT)
- 理論・手法を学ぶ(OFF-JT)
- 振り返り・共有する(レビュー会)
- 改善に再挑戦(再OJT)
この循環を回すことで、「学ぶ→実践→振り返る→再実践」というプロセスが文化として定着し、改善が自走するようになります。
教育と改善を切り離さず“改善そのものを教育の場”にする発想が鍵です。
あなたの現場では、OJTとOFF-JTがつながっていますか?
両者を結ぶ仕組みが、学びの定着を左右します。
4. SECIモデルで実現する教育の仕組み化
― 暗黙知を形式知に変え、知識が循環する組織をつくる ―
人材育成を持続可能なものにするためには、教育を単発イベントではなく「仕組み」として組み込むことが必要です。
その際に有効なのが、SECIモデル(野中郁次郎・竹内弘高)に基づく知識創造の考え方です。
4-1. SECIモデルとは
SECIモデルは、知識を「暗黙知(経験や勘)」と「形式知(言語化・体系化された知)」の相互変換プロセスとして捉えます。
以前のブログでご紹介したSECIモデルがこちらです。

この理論は難しく感じられるかもしれませんが、実は日常の教育現場でも自然に起こっています。
| 段階 | 名称 | 内容 | 現場での例 |
|---|---|---|---|
| S:共同化 | 経験を共有 | 現場観察・ペア作業・OJT | ベテランが新人にコツを伝える |
| E:表出化 | 経験を言語化・図解化 | 改善手順をマニュアル化 | 動画・手順書作成 |
| C:連結化 | 知識を体系化 | マニュアル・教育資料整備 | eラーニング・スキルマップ |
| I:内面化 | 知識を再実践で体得 | 習熟・再OJT | 現場で再学習・実践 |
支援先の福祉関連企業では、ベテランこそ暗黙知で回してしまうので、月2回集まって、知を仕組み化するためのワークショップを実施しています。議論を通じて得られた知見を、業務プロセスのフロー化に反映しています。
このサイクルを回すことで、「個人の知識」→「組織の知恵」→「再び個人の能力」へと循環が生まれます。
4-2. SECIモデルを活かす教育仕組み化のポイント
- 属人化を防ぐ仕組みづくり
スキルマップ・標準作業書で再現性を確保し、経験を組織に残す。 - 暗黙知の形式知化
改善事例やノウハウを言語化・動画化し、教育コンテンツ化する。 - 知識の再学習と文化
共有会やレビュー会を定期開催し、学びを現場に戻す。
教育の仕組み化とは、単に研修制度を整えることではなく、
経験を知識に変え、知識を再び行動へと還元する「知識の循環」を設計することです。
5. 人材育成を重視する企業が、労働生産性を持続的に高める
育成は単なる教育施策ではなく、組織文化の問題です。
「人を責めず、仕組みを見直す」「失敗を学びに変える」文化がある組織ほど、人は自ら考え、動き、改善を続けます。

前職のドイツ企業では“Fail Early, Fail Often”ということが奨励されていました。日本語だと「失敗を恐れず、まずやってみる」といったところでしょうか。これは明らかに心理的安全性が保たれるいい文化だと今も感じてます
日本の中小企業においても、心理的安全性を高める仕組みと対話文化が、改善の持続に直結します。経営者やリーダーは「人を育てる人」を育てることを意識すべきです。
対話・承認・振り返りを通じて、チーム全体の思考力と当事者意識が高まります。
改善は仕組みで回しますが、それを動かすのは人の力です。
その人づくりこそが、持続的な生産性向上への最短ルートです。
人材育成 × 仕組み化で労働生産性を上げる まとめ
「人が育つ組織」こそが、改善を継続させる最大の力
- 生産性向上は「仕組み × 人 × 組織文化」の掛け算で成り立つ
- 現場を動かす3タイプの人材を意識して育成を設計する
- OJTとOFF-JTを融合させ、学びの循環(ラーニングループ)を回す
- 暗黙知を形式知に変え、SECIモデルで知識を組織資産化する
まずは、自社の「OJT」と「OFF-JT」の現状を見直してみましょう。
どんな育成の仕組みが、あなたの現場で生きているでしょうか?
善コンサルティングオフィスでは、実行・定着に重きを置いた伴走支援を行っております。ぜひ一度ご相談ください。
